遊牧民の生活品として始まったギャッベには手本や図案がなく、織手の豊かな感性に委ねられ即興で織られます。

花、人、動物、幾何学模様など、牧歌的でどこか親しみを覚えるそのデザインは今や世界中で愛され、プリミティブアートとしても高い評価を得ています。

ここではそんなギャッベに取り入れられているモチーフについてまとめました。

ギャッベのモチーフ一覧

生命の木

数あるギャッベの柄の中でも特に有名な生命の木。

これは木(命)が大地に根を張って天に向かって大きく育っていく様子から、赤子・子どもの成長や家族の健康を願う意味合いが込められています。

後述する糸杉や柳もデザインを変えて生命の樹として描かれることもあります。

糸杉

イランにおいて糸杉の木は清廉潔白や容姿端麗の象徴として扱われています。また、遊牧民の間でも健康や長寿を表すといわれています。

荒涼な大地ではロクに植物も育ちません。それもあって天に向かって真っ直ぐに伸びる常緑樹の糸杉は「神」を意味することがあり、永遠の命や力強い生命力のシンボルでもあるといわれています。

鹿

鹿という動物は昔から母鹿が小鹿にしっかり寄り添って子育てをすることで有名です。ここから、鹿のモチーフは子供の健やかな成長をイメージしていると言われています。

ギャッベは元来遊牧民の女性が織るものですが、鹿の多いギャッベはもしかしたら子沢山な女性がわが子の成長を祈ってデザインしたのかもしれませんね。

ラクダ

ラクダは遊牧民の方たちにとって欠かせない存在。主に移動の際に日用品や財産を運んでくれる大事なパートナーです。

このことからラクダは財産や次の土地での成功を想起させるものとして、ギャッベでは「成功」や「財産」を意味するものとして織り込まれます。

遊牧民の生活に飛行機なんてありません。となると、彼らの頭上を最も高く飛ぶのは現地の鳥。

そこで鳥は天(神)に最も近い存在ゆえに神からの使者として見られています。

 

ライオン

イランの国旗にも採用されたことがあるライオン。ギャッベでは見ての通り、強さや権力の象徴の意味があります。

今ではほとんど目にする機会も減りましたが、オールド(一昔前のギャッベ)には人面ライオンのようなデザインがあります。

それは織り手の女性の旦那や恋人がライオンのような強さ・権力を持ってほしいという意味が込められていたと言われています。

羊 ・ヤギ

ギャッベのデザインでは最も目にする羊とヤギ。

家畜(羊、ヤギ)は遊牧民にとって生活の要でもあり、衣食住全てを与えてくれる家族同様の大切な仲間です。

ここから羊とヤギは経済的に不自由のない安定した生活を願って織られたと言われています。

女の子(人間)

ギャッベでは数少ない人柄。腰部分がスカートになっている女の子が過半数を占め、わが子への愛情、健やかなる成長の願いなどが込められています。

また、この柄は出産を経た女性、望む女性が織ったりすることも多いので、子孫繁栄も意味します。

 

イラン南部~西部は気候が厳しく、昼夜の寒暖差が30度を超えることもあります。

そんな地域において春を象徴する花は、春への憧れ、願い、自然への感謝などの意味が込められています。

 

足跡

花柄と間違えることも多いこのマーク。実はコレ狼の足跡です。狼は遊牧民の大切な家畜を襲う天敵のような存在。

このことから、足跡マークは狼が周辺に出てこないよう祈ることを意味します。

 

四角形(窓、井戸)

知識がないとただの四角に見えてしまうこのマーク。実はこれは窓を意味し、幸せが窓から入ってくるのを願う意味が込められています。

また四角は窓の他に井戸や水場も意味し、遊牧生活で水に恵まれますように、というおまじないの意味もあります。

菱形

他とは一風変わった幾何学模様の菱形。これは遊牧民カシュガイ族のアイデンティティを示す存在で、通称トランジといいます。

オールド(古いタイプのギャッベ)によく見られ、主に厄除けを意味します。

 

ジグザグ模様

これは見ての通り、水の流れを表しています。ジグザグ模様が縦だと川を意味し、横だと湖を意味します。

毎年絶えず移動する遊牧生活において水は無くてはならない存在。そのためこの文様は水への感謝の意味合いもあるそうです。

横向きのうねった字

どうしてギャッベの途中に変な糸が?と思われるかもしれませんが、織り手さんのミスではありません。

このうねうねした字はケルマックという小さな虫のことです。

主に魔除けとしての意味合いを持ちます。

X印

Xというのは遊牧民の間では終わることのない永遠を意味します。

使い方は様々ですが、主に家族の健康と愛が永遠に続くことを願う時に織られるようです。

V印

この印は遥か昔、遊牧民が狩りで使っていた矢じりを意味します。

男性の道具である矢じりには力強さ、希望、憧れなどのエネルギッシュな意味が込められています。

 

 

モチーフの一つひとつからギャッベを楽しむ

ここまでギャッベによく見られるモチーフを解説しましたが、いかがだったでしょうか。

知識の無い人からするとサッパリ意味が分からない動物や記号の縫い込みでも、背景にはちゃんとした意味があったんですね。

モチーフ一つでもギャッベに対する理解がグッと深まり、今まで以上にギャッベをより楽しめるようになってくるので、ぜひ参考にしてみて下さい。