ギャッベが完成するまでの流れを分かりやすく解説します。

ギャッベができるまで

1.羊の毛を刈り取る

ギャッベの絨毯作りは、まず羊の毛刈りから始まります。

毛刈りの時期は毎年冬が明けたばかりの春先で、男性陣が行います。

慣れたベテランでも1頭刈り取るだけで20分はかかると言われている羊の毛刈り。それを何十~何百頭もこなすわけですから、かなりの重労働ですね。

2.糸の手紡ぎ

刈り取られた大量の羊毛は綺麗にほぐした後、人の手で梳かれ、紡がれ、撚られ、一本の糸となります。

機械ではなく人の手で紡ぐので糸に微妙な太さの違いが生まれ、それが染色時に絶妙な色ムラ(アブラッシュ)となり絨毯に深みを与えます。

この作業は子供からお年寄りまで年齢や性別に関係なく全ての人が時間を見つけてはやっています。

ただ、簡単そうに見えて実は高度な技術が求められるので使用に耐えうる糸を作れるようになるには相当の時間がかかるそうです。

1人が紡げる平均的な糸の量が一日約150グラムということからも、この作業の難しさが伺えます。

3.草木染め

糸が完成したら次はそれを草木で染めます。

鍋で煮る時間や草木の質、投入した量によって色合いが微妙に変わるので、ここは染め手のセンスが問われる部分です。

染め手は微妙な匙加減と調節をして多種多様な糸を生み出していきます。

4.ギャッベを織る

染色が終わったらいよいよギャッベの肝である手織りに入ります。

ギャッベを織るのに使用される織り機は直立した竪機ではなく、地面に寝かせた地機と呼ばれる水平機タイプのものです

ここに経(たて)糸を張り、少しずつ、頭の中に図案を思い浮かべながらギャッベを織っていきます。

横一列を織ったら櫛のような緯打具で打ち固め、横糸を通し、また一列織ったら緯打具で打ち固め・・・まさに気の遠くなるような作業です。

ギャッベの作成において最も時間がかかるのがこの工程で、大きなサイズになると熟練の織り子さんが3人、4人で織っても数か月もかかります。

5.焼き入れ

完成したギャッベはオアシスの古都シラーズに一度集積され、ここからはいよいよ仕上げ作業に入ってきます。

まず最初に行われるのが、豪快な焼き入れです。

知らない方が見るとビックリされるこの光景ですが、これはギャッベの隙間から出ている細かいチリ毛を無くし使い心地を良くするための大事な作業。

目に見えないほど小さな虫を滅却処理する防虫の意味もあるので欠かせないところです。

ギャッベに使われる羊毛は難燃性が優れているので、軽く火で炙る程度であれば絨毯が焦げたり燃えたりする心配はありません。

また、焼き入れ処理をすると絨毯の結び目が強固になり耐久性も増すので、そういう意味でもギャッベ作成においては欠かせない工程です。

6.毛足の長さを揃える

元々ギャッベは地面に敷いて土足で使うことを前提に織られた絨毯です。しかし世界中で人気を博して以降、日本のように室内で使用される機会も増えてきました。

これを受けて、現在のギャッベは仕上げ工程の一つとして長すぎる毛足を短くカットし綺麗に整えられるようになっています。

バリカンで髪の毛を切るのをイメージしてもらえれば分かりやすいかと思います。

7.水洗い

次は水洗いです。絨毯の水洗いというと優しく、デリケートに行われそうなイメージがありますが、ギャッベの場合はかなり豪快。

床をデッキブラシでゴシゴシ掃除するのと同じように、専用の道具でギャッベを石鹸水で洗っていきます。

このように豪快な洗い方をするのはギャッベが頑丈だからというのもありますが、遊び毛(抜け毛)を押し出して仕上がりを綺麗にするためでもあります。

また、ギャッベに使われている羊毛は人間の髪の毛と同じで素の状態のままではツヤ感や潤いはありません。

そこで、この水洗いをする際にリンス処理もして、仕上がりをより一層美しいものにします。

8.脱水、天日干し、ブラッシング

水洗いを終えたギャッベは脱水機にかけられた後に天日干しされ、直射日光であっという間に水分を飛ばされた後にブラッシングが行われます。

ここも人間の髪の毛と同じで、しっかり乾かした後にブラッシングをしないとギャッベ一本一本の毛が固くなってしまいます。

それを防ぐためにも、このブラッシングは絶対に欠かせない工程の一つです。

9.最終チェック

最後に、ギャッベに問題がないか目視チェックが行われます。

縁かがり、経糸のふさの巻き込み、ゆがみのチェック、織りの細かなチェックなどが行われ、ようやく完成です。