ギャッベ最大の特徴ともいえる草木染め。

大自然の中で取れた天然素材から抽出されたその色は見るものをどこか懐かしい気持ちにさせ、イランから遠く離れた私たち日本人の心をも魅了します。

ここではそんな草木染めについて分かりやすく説明させて頂きます。

草木染めの工程

ギャッベは長い歴史の中で当初は染色しないほとんどナチュラルカラーの糸を使用し、必要な範囲だけを草木染めしてギャッベを織っていました。

そこから時は流れ、今では草木染めはギャッベの制作に欠かせない工程になりました。

ギャッベを織るにあたり、まず最初に羊毛を紡いで糸にします。次はそれを草木から採取した染料で染めていきます。

後述する様々な染料と一緒に羊毛を大鍋に投入し、これを数時間かけてじっくり煮続けます。

中には濃い色合いを出すために大鍋で何回も繰り返して染め上げる場合もあります。

大鍋で煮る時間や投入する染料の質・量によって色合いも微妙に変わるので、ここは染め手のセンスが問われる部分です。

ちなみに、ギャッベにおける草木染めは他の絨毯と異なり染料を大量に使うことで有名です。

鍋でじっくり煮られ染色された糸は水洗いされた後、照りつける太陽の元で十分乾燥され色鮮やかな糸になります。

草木染めだからこその魅力、アブラッシュ

草木染めを語る上で欠かせない要素があります。それがアブラッシュです。

アブラッシュとは、草木染め特有の糸の色の濃淡のことを指します。

水がたゆたう様な青色のグラデーションや時間経過と共に深みが増す夕日を表現した赤色など、これらはアブラッシュがあるからこそ実現できるものです。

工場内で化学染料を用いてほぼ均一に染められた糸で織られた絨毯ではこうはいきません。

人の手で染めるからこそ不揃いで、それがかえって絨毯に深みを与える・・・

これもまたギャッベがいつまで見てても飽きない理由の一つといえるかもしれませんね。

草木染めに使われる植物、それぞれの色について

イランにはおよそ3000種類もの草木染めの原料となる植物があるといわれています。

ここではそれらの色の特徴や、材料となる代表的な植物について説明します。

茜の根っこ、ザクロの皮(赤色)

ギャッベの色の中でも最も生命力に溢れた「赤」。これはカシュガイ族の女性が最も好む色であり、日本でも根強い人気を誇ります。

ギャッベにおける赤色はローナス(茜)という植物の根っこ部分に由来します。

ローナスは大地の表面が白くなるほど塩分の強い土地で栽培され、植え込んでからも収穫までは4年もの年月を必要とします。

その生命力はすさまじく、ギャッベの染料だけでなく漢方としても用いられているほど。

これを石臼でゆっくり挽き粉末状にすることで、ギャッベの染料として生まれ変わります。

ちなみに赤色は草木染めの前処理として、サージュという溶液に浸した状態で5時間煮て、さらに丸一日かけて窯の中で熟成されます。

藍(青色)

日本人にとって馴染み深い藍。藍の美しさは外国でも高く評価されており、ギャッベの草木染めでも使用されます。

草木染めは原則イラン国内で取れる野草のみを原料としていますが、青色だけはドイツから輸入した藍が使用されています。

羊毛を青色に染めるには藍を溶かしたお湯に羊毛を1時間以上浸し、鍋が煮立たないよう注意しながら50~60度をキープし続けます。

最初は緑色に見えますが、空気に触れさせることで美しい青色へと変化します。

この色だけは染色後に水洗いをせず屋内干しで一晩乾燥させます。そして十分な青色が出るまでこの工程を何度も繰り返します。

ザクロ、ジャシール(黄色)

ギャッベの黄色は主にザクロとザクロス山脈に自生しているジャシールという野草から採取されます。

ザクロは可食部ではなく実の皮の部分だけを乾燥させそれを粉末状にします。

そこにジャシールを始めとした様々な材料を加え、24時間以上の漬け置き、5時間にも及ぶ煮出しを経てギャッベ独特の黄金色が現れるようになります。

ちなみに、草木染めには使わないザクロの中味(可食部)は加工され海外にも輸出されています。

ジャシール、藍(緑色)

草木染めという言葉から緑色はもっとも簡単に出せそうな印象を受けますが、実はまったくの逆。

緑色だけは唯一、色を出すにあたり2度染めが必要となります。

まずは羊毛をジャシールで一度黄色に染めます。そしてそれを藍の大釡に投入し、黄色と青色の組み合わせによって緑色へ変化させます。

最初に染色した黄色の濃淡や藍の量によって、緑色といっても新緑色や深緑色など、実に様々な緑色が生まれます。

くるみ(茶色)

ギャッベには羊毛を草木染めをしない「ナチュラル」という種類があります。

これは羊毛自身が元から持つ色を楽しむ絨毯で主に白色や茶色がありますが、では草木染めに茶色がないかというとそんなこともありません。

クルミの皮部分から抽出した茶色の草木染めは非常に深みのある綺麗な色合いで、ナチュラルの茶色に勝るとも劣らない魅力があります。

奥が深い草木染めの世界

ギャッベの草木染めについて簡単にまとめてみましたが、いかがだったでしょうか?

草木染めは極めようと思ったら本当に奥が深い世界で、文章や写真だけで理解するのは正直難しいところです。

今回の記事を読んで、一人でも多くの方が草木染めに興味を持って頂けたら幸いです。